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2021/06/22

「プロ」

ずっと歌をうたうプロになりたかった。

まだ小さい私にはそれが実際どんなものかなんて分かっていなかったと思うけどそこから今に至るまで私はプロになりたいと思ってきた。
中学生になった頃からボイストレーニングに通うようになって、どこのスクールに行ってもまず決まって「趣味ですか?それともプロ志望ですか?」と聞かれた。
毎度「プロ志望です。」と答えた。
プロを志望する生徒には趣味でやりたい人とは違うプログラムが組まれるし、レッスン料も格段に違う。
そして私がやりたいと申し出たものを必ずやらせてくれた両親。

とにかく歌がうまくなることがプロへの道だと思った私はとにかく練習をした。
歌って録って聴いてをひたすら繰り返し、レッスンへはどんなに疲れてても大雨の日でも欠かさず行った。
歌は1日では上手くならないことは分かっていたので1週間、2週間みっちり一人で練習してレッスンのたびにできなかったことをできるようにしていって先生をびっくりさせるような変化を繰り返していこうと考えていたし、実行した。
歌の発表会では大体いつも最年少だったので「若いのにすごいねぇ〜」とか言葉を貰った。

でも一度もプロだとは言ってもらえなかった。

今考えれば、実力や才能があればこのあたりでどこかの音楽業界の人の目にとまり引き抜かれてプロへの道へと進むんだと思う。これが全てでもないのはもちろんだけど。

でも私にはそんなことは一切なかったし私がプロになれないのは自分の実力不足だからだと練習する日が続いていた。

その頃の私の日記に「私は本当に歌で生きていけるのですか?」って書いてある。
過去の自分に言いたいことがたくさんだよ。

そして大学も卒業して、全く初めてのブライダル業界に就職。
入社してすぐにお客様対応をするようになった。
上司から何かを教わる際にも「プロとして○○」「プロだから○○」と言われたし、お客様からも「プロ」という言葉をよく言われた。
入社して1ヶ月も満たないのに。

私が何年も欲しくてでも貰えなかった言葉がなぜこんなにもすぐに貰えてしまうんだ……と毎日思っていた。

そんな話を友人の前でぼやいたことがあった。
そしたら特に考えるでもなく友人は「しおりは今の仕事朝早く起きて夜までずっとやってるでしょう?でも音楽はその合間だったりやりたい時にやってるよね。やりたいやりたくない関係なくやるってプロだよ。」と言った。
果たしてこの回答が正しいものなのかは分からないけどその時の私にはとてつもなく響いた。
そうか。やりたい時にやる、じゃ足りないのか!って。
歌うことへの向き合い方も時間の使い方、自分の周りの環境も変えた。

そこから色んな日々を経て今。6年くらいが経った。

プロかと聞かれたら自分で作った歌をプロとして唄っています、と答える。

でも、本当の本音は自分の最後の日までに自分が納得する「言葉を唄うプロ」になりたいと思っている。
今はまだまだそれへの途中経過。

結局自分の評価って誰でもなく自分の中に存在しているんだと思う。
自分が誰であるかさえも。