2nd full album咲く意味は2019.10.12 Release

2ndフルアルバム「咲く意味は」
自分の一生、誰かの一生、路傍の花の一生。芽吹き、咲き、枯れていくことになんの意味があるのか。
「愛、哀、怒、悦」誰しもにある様々な感情で形どられる一生は何のためにあるのか。
アルバムを通じて貴方の心の中に浮びあがるものがあれば幸いです。

咲く意味は

2nd full album咲く意味は

  • 1. 愛なき場所
  • 2. ただ在るだけ
  • 3. ここにいるよ
  • 4. 犠牲の海
  • 5. 忘れたくない日々
  • 6. 行く道交わる日

Liner Noteswritten by 白石なる
白石なるホームページ( https://narushop.exblog.jp/28661062/ )より引用

編曲家兼演奏家として制作に携わった女性SSW詩央里の2枚目のアルバム『咲く意味は』が発売されました。
僕個人のこれまでの音楽活動のなかでもとくに関りが大きく思い出深い作品になりました。
レコ発ワンマンライブの開催に際して詩央里から様々なことが発信されましたが、この作品の中身について語る機会は現在のところあまりなかったように思います。そこで今回、アレンジャーとプレイヤーの両視点から各収録曲について制作秘話のようなものも織り交ぜながら、ぜんたいてきにテキトウに、なんとなぁく解説いたします。曲が生まれた経緯や歌詞の内容などについては作曲者である詩央里自身から語られるべきとして、僕からはそれ以外のよりマニアックな情報を提供しようと思います。

詩央里のこの作品を手に取ってくれた方々にとって、この文章が鑑賞の助けになりますように。

1. 愛なき場所

展開が多く忙しい曲。それゆえになかなかドラマチックな曲となっております。曲の構成を呼ぶ際、通常は「Aメロ、Bメロ、サビ」とか「バース、ブリッジ、コーラス」と言うことが多いのですが、この曲は展開の多さからCメロとかDメロなんて言って共通認識を図っていました。展開ごとにテンポも変わるし、なんならフリーテンポな個所も多いためレコーディングは難航しましたが、乗り越えて結束力強まったよね。
弾き語りから始まって段々と楽器が増えていくのは詩央里の注文でした。しかし彼女は「ギターはもっと遠くで弾いてほしい」とか抽象的なことを言うことがとても多いので、そのあたりを統べて具体性を持たせて整えるのがアレンジャーとしての役割だったかと思います。また一部コードを詩央里の原案のものとは変えたり(リハーモナイズと言います)、最後のサビに向けた転調をしかけたりもしています。詩央里はこの個所の、伴奏をピアノに任せて転調した先でギターをジャンと鳴らすのがかなり気に入ったみたいで練習ではよくニヤニヤしてました。「してやったり」というところです。
アウトロのコーラスは僕の知らないところで詩央里が勝手に一生懸命多重録音していたのですが、これが本当に素晴らしくて感激しましたね。僕の発想になかったものが提示されると、つくづく「人といっしょにものづくりをするのは楽しいなぁ」と感じます。それはギター町田雄崇のプレイからも随所で感じられます。彼はテクニックがあるタイプのプレイヤーでは決してないのですが、いつだってメンバーの誰よりもジブンの役割を作り込んで練習して合奏に参加してくれています。この曲でも職人っぷりが光ります。彼のギターなくして詩央里brothersのサウンドはありえないと僕は思っています。

2. ただ在るだけ

詩央里とはいっしょに演奏をするようになって4年が経つのですが、ようやく時がきたのか、はじめていっしょに作曲をしました。僕がテキトウに伴奏を出して、詩央里がそれに合わせて適当に歌う遊びをしたのがはじまりでした。はじめのうちはすこしぎこちなく悩み考えながら歌っている印象だったのですが、あるとき僕のリーダーバンドのピアノトリオの練習に詩央里が遊びに来てくれた際に、同じように僕らが伴奏をするのに合わせて歌ってもらったら、それこそ何かが降りてきているように自然とのびのびと歌っていて、そこからはメロディや構成を整える程度の作業で完成しました。その時のことを詩央里は「あの時あの音の中にいて感じたことをそのまま出した」というように語っていたと思います。完成までは早かったですが、それプラス僕や詩央里がこれまで歩んできた四半世紀とちょっとの時間が、人生が込められいるように思います。
(やや専門的な分析になりますが)テンションノートがモチーフになった曲は詩央里としてはかなり珍しいのではないでしょうか。イントロから提示されるアコギのA音はGM7の9度、Em7の11度、CM7の13度と進行していき、次でようやくA7のトップノートになり調性がDメジャーと確定されます。詩央里の歌い出しもそれに導かれるように9度のテンションからはじまります。少なくとも今までの曲でメロディがテンションからはじまることはなかったですよね。
かなりアコースティックな編成で、やさしくなめらかであたたかいサウンドに仕上がりましたね。レコーディングもほぼ一発録りで自然な勢いそのままをパッケージングしました。ジブンの昔から好きな音楽の要素と「これまでの詩央里らしさ」が上手く自然に混ざり、「らしさ」の幅が大きく拡がったのではないでしょうか。僕にとってもお気に入りの1曲になりました。個人的に馬部真也のドラムがめちゃくちゃ好みです。水彩画みたいなドラムだと思う。

3. ここにいるよ

詩央里が友人らと行っている動物愛護活動が制作のテーマになっている曲です。家族や恋人目線の曲としても解釈できる余白があるのがよいところですね。
この曲も詩央里原案のものを弾き語りで聴かせてもらって、コードをある程度整えたらもうバッチリ弾き語りの作品として素晴らしいものになったので、バンド編成で収録するにあたっては「さてどうしたものか」とかなり悩みました。今作中一番アレンジに悩んだのはこの曲だったかもなぁ。結果として更なるコードのリハーモナイズとキメ打ちといった仕掛けを増やすことと、いつもならピアノを弾いているところエレピ(とハモンドオルガン)で攻める形で、過去作にないサウンドに仕上げることができたように思います。
リハモについてはけっこう細かくやっていて、例えばドミナントの和音はテンションが乗っているのか乗っていないのか、sus4として処理するのかしないのか、ということを現れる度に違った扱いをしているのでたいへんです。(厳密にはこれらはそうなるように調整したのに合わせて演奏しているのではなく、ギター町田雄崇が予め作ってきてくれたフレーズに合わせてコードを定着させる手法を取っています。)
あギターね、この曲も終盤のチョーキングやアウトロのソロが特に素晴らしいです。僕は彼に「ワンワンニャーニャーみたいなの意識してんの?」と訊ねましたが「別にそんなことないけど確かに言われてみれば・・・?」とのことでした。曲の物語のことよりもサウンドの充実を図って考えて演奏した結果がこれなんだからセンスを感じずにはいられませんわ!

4. 犠牲の海

詩央里が怒りを原動力に作った曲ですね。弾き語りで聴かせてくれた彼女なりの情熱的なギターの刻みをそのままに、しかしありがちなバンドサウンドにはならないようにアレンジしようと思いました。そういえば我がbrothersの兄(ドラム馬部真也)と姉(ベース渡部かをり)はふたりともラテン系がやや得意だったような気がしたので、いわゆるラテンキューバン風のパターンを軸にアレンジしてみました。妹(我らがプリマドンナ詩央里)と弟(ギター町田雄崇)の言ってしまえばベタなギターサウンドと年長組3人のラテンサウンドが上手くマッチしたように思います。ちなみに詩央里はこの曲のギターは必死に練習したそうです。出会ってしばらくは楽器何もできなかったのにって考えると信じられないくらい上達したね、本当に。
そういえばこの曲に関しては原案のコードも構成も殆どいじってないですね。経過的にディミニッシュを挟んだりドミナントにテンションを足した程度です。サビ前のドッペルドミナントなんて「お前どこで覚えたこれ!?」って怒りましたもん。詩央里がイメージできる和音の幅が拡がってきているのがよく分かります。素晴らしいです。

5. 忘れたくない日々

なんかいつだったかのスタジオで急に譜面配られて「せーの」で演奏させられたのが最初でした。この曲も弾き語りでしっかり完結できていたのでバンド編成にアレンジするのに試行錯誤を重ねました。比較的ベタなギター主体のアレンジですが展開に合わせた楽器の足し引きやコードのリハモで質の良いものになったんじゃないでしょうか。アウトロの例の有名なキメはみんなでアレンジを練っているときに冗談で弾いたら詩央里が気に入っちゃったのでそのまま採用となりました。クールだね。
個人的にはこの曲でがっつりハモンドオルガンを使えて嬉しかったです。いい音してますよね。実は前作『To my brothers』でも一部楽曲で装飾程度にハモンドを使っているのですが、当時はハモンドの音作りがまるでイメージ通りにできず悔しい思いをしました。今もまだまだ本当にイメージするものそのままを出すまでには至りませんが、かなり満足のいく演奏ができたと思っています。あとこっそりエレピも鳴ってるんじゃよ。そのあたりにも耳を傾けてもらえたら嬉しいです。(あたりまえだけど全員一生懸命こだわって録音してるので、歌だけじゃなくて各楽器に注目して聴いてもらえるとありがたいですね。きっといっぱい発見がありますよ!)

6. 行く道交わる日

「別れのときはいつか必ずやってくる」と分かっている詩央里が、僕らbrothersに向けて作って、ピアノの弾き語りで披露してくれた曲です。それを僕からの「答え」のような形で、心を込めて全力でアレンジを書いて返しました。
普段、詩央里の曲のアレンジを考える際、僕は僕自身の作編曲家としての作家性は必要ないものだと考えています。詩央里が曲をどういう方向に育てていきたいと思っているかということを第一に、その次に詩央里を含めたbrothers全員がプレイヤーとして独自性を発揮できるアレンジにすることを強く意識しています。ですので、プレイヤー各々が曲が良くなるように悩んで考えて自分の役割を作り上げられるように、具体的な指示は必要最小限で余白いっぱいのメモ書きのような楽譜だけをみんなに共有します。これがいつもの作り方です。
しかし、この曲に関してのみ、かなり具体的に、綿密にアレンジを書きました。そうなんです、僕は詩央里と関わるなかでこの曲ではじめて、アレンジを「書いた」のです。全パート音符をきちんと五線譜に書いて、僕がイメージする音をみんなに鳴らしてもらったのは詩央里brothersでは本当にはじめてのことでした。でもやっぱり僕はみんなにも曲を良くする方法を考えてほしかったから、独自性を出してほしかったから、挑戦してほしかったから、2番から間奏ギターソロまでの1コーラスはいつも通りのコードネームしか書いてない余白だらけの楽譜を渡しています。結果として僕の思惑通り、1番の綿密なアレンジをしっかり継承する形で各々が考えてフレーズを入れてくれました。ひとりの例外もなく皆挑戦してくれていると思います。(とりわけベース渡部かをりはこの手法を採用すると光るのを感じます。寄り添うのが得意という人でも適切な前提の提示があるのとないのとでは結果は違うのだなぁと勉強になりました。)けどコードの指示がけっこう細かいからみんな大変だったんじゃないかなぁ。ギターソロなんて難しいコードなのにバッチリキメてくれたよホントすごいよ~!大好き。楽器をやってる方にはぜひ耳コピしてほしい出来栄えです。

以上です。まさかの4000字超え!全部読んだあなたは詩央里ファンを飛び越えてもはや白石ファン!すごい!
そんなわけでね、僕は今後も詩央里とものづくりを続けることでしょうし、なんならもう次の作品に向けて何かが動き始めているとかいないとか?フゥ!
それではまた時が来たら現れます。アミーゴ!

アルバムを聴いてくださった皆様、どうか詩央里にひとことでも感想を伝えてあげてくださいね。

2019年10月23日 白石なる